ヤコブと12人の息子たち
前回は、逃亡していたヤコブが故郷に戻り、兄エサウと和解したところまでをまとめました。今回は、ヤコブの息子たちの話になります。中心となるのは、11番目の息子ヨセフです。

ヨセフの話は、映画にもなっていますから、ご存知の方も多いかと思います。ヨセフは神に守られ祝福を受けるのですが、苦難も多かった人物です。ヨセフが神を信じて困難を乗り越えていく姿から、励ましを受け、祝福を受ける方法を一緒に学んでいけたらと思います。
私の今日のおともです。大好きなブルーチーズと蜂蜜のマフィンに、ソイラテです。神からのご褒美として、美味しくいただきました。
ヨセフの見た夢
ヨセフが17歳ごろになると、兄たちと一緒に、父ヤコブの羊たちの世話をするようになっていました。ヨセフは仕事をしながら、兄たちの素行の悪い所を見つけると、父ヤコブに言いつけることがあったようです。それでなくてもヨセフは、父からひいきされ、可愛がられているのですから、兄たちの嫉妬を受けるようになっていきます。
ヤコブには、二人の妻と、二人の女奴隷から生まれた、12人の息子がいました。ヨセフは11番目の息子ですが、父ヤコブの本妻ラケルから生まれた事、またヤコブが年齢を重ねてから授かった子供でもあり、一番に大切にされて育ちます。12番目の息子ベニヤミンが一番愛されるのでは?と思われる方もいらっしゃると思うのですが、ここでは本妻から生まれた、最初の待望の息子ということでご理解いただければと思います。父ヤコブは、ヨセフを長男として扱い、長男としての証の「袖の長い晴れ着」をヨセフに与え、溺愛していました。

ある日、ヨセフは夢を見ます。その夢の内容は、ヨセフと兄たちが一緒に畑で働いていると、ヨセフの結わえた束が立派に立ち上がり、兄たちの結わえた束がその周りでひれ伏しているものでした。若くで無垢なヨセフは、その夢を兄たちに堂々と話してしまいます。
まるで兄たちがヨセフの支配下に置かれ、ヨセフを敬うと思わせるその内容は、ますます兄たちの嫉妬と怒りを招くことになります。

くわえてヨセフはもう一つ別の夢を見ます。その内容は、太陽と月と11の星が、ヨセフにひれ伏しているという物です。まるで兄弟11人だけでなく、父と母までがヨセフを敬い、仕えることを表すような内容です。
この夢の話に、さすがに父ヤコブも、ヨセフを叱ります。ですが父ヤコブは夢として片づけるのではなく、この夢の意味を思いめぐらせていました。ヨセフの見た夢が神から語られた事なのか、もしそうなら、ヨセフは神に特別に選ばれているのではないかと、父ヤコブは感じていました。
売り飛ばされるヨセフ
ある日、ヨセフは父から使わされて、羊たちの世話をしている兄たちのところに様子を見に行きます。ヨセフが兄たちのところに向かっていると、遠くでヨセフに気づいた兄たちは、ヨセフを殺して穴に投げ込もうとたくらみます。父にはヨセフは野獣に食われたと誤魔化すつもりでした。
ですが長男のルベンだけは、ヨセフを殺してはいけない、穴に投げ込むだけで十分だろうと、兄弟たちを説得します。ルベンは後で、ヨセフを穴から引き上げて助け出すつもりでした。
ヨセフは、兄たちに着ていた袖の長い晴れ着をはぎ取られ、穴に放り込まれます。幸いにその穴には水がありませんでした。そこに、ある商人の一行が通りかかります。それをみて兄たちは悪だくみをします。
長男ルベンが見ていないうちに、ヨセフを穴から引き上げ商人に売り渡してしまします。ヨセフは商人たちによって、奴隷としてエジプトに連れていかれます。

ヨセフを穴から助け出そうとした長男ルベンは、ヨセフががいなくなったことに気づき、嘆き哀しみます。
他の兄弟たちはヨセフの晴れ着に獣の血をつけて、父にヨセフが野獣に襲われて死んでしまったと伝えます。父ヤコブはひどく哀しみ、死んでしまいたいと思うほどでした。
兄たちの妬みによって、ヨセフは散々な目にあいますが、神は全てをご存知でした。神は、父ヤコブのヨセフへの溺愛、ヨセフの生意気な性格、また兄たちの嫉妬を用いて、すべて神の計画に導いていきます。
ヨセフの困難と祝福
そのころヨセフは、エジプトの王に仕える役人、ポティファルという監獄の責任者のもとに、奴隷として売られていました。神がヨセフを守ってくださったので、ヨセフのすることは全て上手くいき、主人ポティファルに認められるようになっていました。主人に信頼されたヨセフは、主人の家の全財産や業務を任されるまでになりました。

そんな若く優秀なヨセフをみて、主人ポティファルの妻がヨセフを誘惑するようになります。ヨセフは、神と主人を裏切ることはできないと誠実に断り続けるのですが、主人の妻はしつこく言い寄ります。それでもヨセフがかたくなに断るので、腹を立てた女主人は、ヨセフに襲われたと嘘をつき騒ぎ立てます。
せっかく主人に認められて優遇されていたヨセフですが、主人の妻によって信用を失ってしまい、投獄されてしまいます。兄たちに妬まれ、奴隷となっただけではなく、犯罪者にされてしまったヨセフですが、神はヨセフを守り、獄中でもヨセフは成功していきます。
獄中のヨセフは、看守長にとても気に入られ、信頼されるようになります。他の投獄者たちの面倒を任せられ、いつしか監獄内のすべての管理をするようになります。すべて神のご計画であり、神の力を与えていたので、ヨセフのするすべての事がスムーズに進んでいきました。
信じられないことですが、犯罪者であったはずのヨセフが出世しています。ここでヨセフが自分の不遇に嘆き、あがき、神に背いていたら、面倒なことが起きていたかもしれません。いつもでも神を信じ、神に認められる正しい事を行うことが、祝福につながるのですね。
夢を解き明かす
そんなころ、王宮の料理長と、ぶどう酒の毒見役の二人が、王のきげんをそこねて、ヨセフのいる監獄に入れられてきました。ヨセフはその二人の世話をするように命じられました。
ある日、投獄されてきた二人は奇妙な夢を見ました。気になった二人は、ヨセフにその内容を話しました。ヨセフは神から、夢を解き明かす力を与えられていました。

ぶどう酒の毒見役の夢は、「目の前に三本の枝のついたぶどうの木があって、それにつぼみができ、花が咲き、実がなった。 毒見役が片手に持っていた王様のワイングラスに、ぶどうの汁を絞り出し、王様にささげると、王がそれを飲みほした。」というものでした。
ヨセフは夢の意味を理解し、「ぶどうの三本の枝は三日間を意味し、 三日経つと、毒見役は監獄から釈放され、また王のもとで働くようになる。」 と説明します。
そしてヨセフは毒見役に、また王宮に戻ったら王に頼んで、無実であるヨセフを、釈放するように頼んでほしいと伝えます。
この二人の話を聞いていたもう一人の投獄者、料理長も期待しながら、ヨセフに夢を話します。「自分の頭にパンかごを三つ載せていた。 一番上のかごは、王様のためのパンやケーキ類でいっぱいだった。ところが鳥が来て、片っぱしから食べてしまった。」ということです。

ヨセフは夢を解き明かします。「三つのかごは、やはり三日間のことです。三日後、料理長は死刑になり、枝につるされ、体は鳥についばまれる。」ということでした。
ちょうど三日後は王ファラオの誕生日でした。王宮に役人や使用人たちが招かれ、宴会が開かれました。その時、王は使いを送って、主の宴会の給仕のために、ぶどう酒の毒味役と料理長を監獄から呼び出します。
王は、毒味役を前のように仕事に戻すのですが、 料理長のほうは死刑にして木につるしてしまいます。ヨセフの夢の解き明かしのとおりになります。
助かった毒味役はあまりにうれしくて、ヨセフに頼まれた釈放のことを思い出さず、王に口添えすることを忘れてしまいました。
神が与えた力

それから2年後、今度は王が夢を見ました。「王がナイル川のほとりに立っていると、川から丸々と太った雌牛が7頭出てきて、あたりの草を食べ始めた。次に別のやせ細った雌牛が7頭出てきて、先の太った雌牛を食べてしまった。それでもその雌牛は醜くやせ細ったままだった。」という夢でした。
続けて王は夢を見ます。「1本の茎に、形の良い実がいっぱい詰まった見事な穂が7つ出ていました。すると突然、同じ茎に別の、焼けて実のない枯れかかった穂が7つ現れます。このしなびた穂が、実の詰まった立派な穂を飲み込んでしまう。」という夢でした。
この夢が気になった王は、夜が明けると国中の魔術師や学者を集め、夢を解かせようとしました。ですが、夢の意味がわかるものはいませんでした。その時、監獄で夢を解き明かしてもらった毒見役が、ヨセフの事を思い出します。
毒見役は、2年前の監獄での夢と、その夢をヨセフが解き明かしたことを詳しく王に話します。それを聞いた王は、すぐにヨセフを王のもとに呼び寄せます。
王の前に出たヨセフは、夢を解き明かす力は、自分の力ではなく、神が与えてくださったと宣言します。自分に与えられている才能や能力を、自分のものだと誇るのは傲慢なことです。すべては神から与えられた物で、神に感謝すべきものです。神の力を認めて、謙遜になる事が祝福につながります。

ヨセフは、この二つの夢は同じことを意味していることを、王に解き明かします。「7頭の太っこれかこれか実のついた穂は、これから7年間の豊作が続くことを意味し、やせた牛としおれた穂は、豊作のあと7年間飢饉が続くことを表している。」とヨセフは、神が王に示していると明かします。しかも、2回も繰り返し夢で知らせていることは、確実にこれらの事が起こると言いう証拠であり、神が決めたことは必ず実現すると言います。
奴隷としてエジプトに来たヨセフでしたが、監獄の責任者ポティファルや、看守長に認められ出世するほどに神の祝福がありました。ヨセフが夢を解き明かすと、神は対策の知恵も与えます。
ヨセフは、夢の中のやせた牛の様子から、7年の豊作を食べつくすほどの酷い飢饉がやってくることを悟り、王に国の農業計画の管理ができる人材を探し出して、対応させるように提案します。
ヨセフが豊作で余った穀物を、王の蔵に保管し飢饉に備えるなど、具体的な内容を示すと、王はヨセフをその役職に任命します。ヨセフが神に選ばれ、神の力で満ちていることを感じとった王は、ヨセフ以外に適任者はいないと確信したのです。
神を待ち望む

ヨセフはあっという間に、王の紋章のついた指輪を権威のしるしとして与えられ、美しい着物と、王が身に着ける金の首飾りで身なりを整えられます。そして、穀物管理の最高責任者になり、王の次に権力を持つ大臣に任命されます。ヨセフの地位を現す豪華な車が与えられ、ヨセフが出かけるたびに、人々が敬礼するほどになります。それに加え、「神の権力を持つもの」という意味の名前を受け、また宗教的、政治的指導者の娘を妻として与えられ、たちまち国中の有名人になります。
とても監獄に入れられていた人物だとは思えない祝福ですね。
ヨセフが王に釈放を頼んだ毒見役が、ヨセフの事を忘れてしまったために、ヨセフは2年も監獄で待たなければなりませんでした。ヨセフが祝福を得たのは、どんな不遇にも自棄にならずに、神を待ち望み続けてきたからではないでしょうか。
聖書には次のような言葉があります。「主を待ち望むものは新しく力を得、鷲のように翼をかって上ることができる。走ってもたゆまず、歩いても疲れない。イザヤ40:31」

他にも聖書には、神を待ち望み、祝福を勝ち取るように書かれている箇所があります。神が計画している時を、忍耐して待ち望むことで祝福を得られるということです。
人は、世間の常識や、状況に目を奪われて、自分の考えで行動しがちです。その自分の計画が上手く進まないと、いらいらすることもあります。神の計画に従わずに、無理にあがいてしまうと、すべての祝福を失ってしまうかもしれません。
奴隷として売られる、冤罪で捕まる、後から入ってきた囚人を助けても、自分は監獄から出られないなど、さまざまな困難をヨセフはよく忍耐したと思います。神を信じて従うなら、忍耐力も与えられます。ヨセフのように、神を信じ祝福を最大に受けていきたいですね。
ヨセフの神の祝福は、まだまだ続いていきます。神がアブラハムを通して誓われた祝福は、もっと大きなものです。次回は、ヨセフの続きのお話になります。ヨセフの見た夢、「兄たちの作物がヨセフの作物にひれ伏す。」、「太陽、月、11の星がヨセフにひれ伏す。」が実現していきます。続けてヨセフを通して、神の祝福を学んでいただけたらと思います。
神は、私たち一人ひとりにも祝福を用意しています。ヨセフのように、祝福を受け取っていきたいですね。

ここまで読んでくださってありがとうございます。また次の記事でご一緒できることを楽しみにしています。皆さんに、神の守りと祝福があることをお祈りしています。